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魔女の館 (3)
(3)不可思議な視線





「美しいな。」





静かに館を見つめながら、アルファは優雅な仕草でこくりと喉元を振るわせた。


目の前には、可憐な容姿の幼女が座る。ベビーピンクの双眸とふわりと巻いた黒髪に真っ黒


なドレスが印象的。しかしその表情は、きらきらと光る幼く無垢なものではなく、大人びた仕草


で呆れた目をアルファへと向けていた。



現在、アルファのいる場所は館の前の大きな庭の一角。




手にもつのは、午後に開かれるはずのお茶会で仕様するはずだった高価なカップである。






「エルデル君。さすがに君の入れたお茶は美味しいね。」



静かに褒められると、アルファの隣で控えていたエルデルが複雑そうな表情を浮かべながらも


やはり嬉しげだった。


「いえ、エリダに比べたらまだまだです。」




アルファに心辺りのあるその名は、エルデルの一つ年上の姉である。


現在、アルファの父親の世話係であるエリダは、アルファも数たび顔を合わせたことがあるよ


く知る人物だった。









「そうだね。エリダは別格。けれど君もなかなか腕をあげたじゃないか。


さすが僕が認めただけはある。ん?フレア。君の口には合わなかったかな?」




さきほどから一口も口をつけようとはしない目の前の娘にアルファは酷く不思議そうに声を


かけた。立ち上る湯気が程よい熱さであることを知らせる。湯気、昇りゆく様をフレアは、この


目の前の幼女は、見つめた後アルファへと胡乱な視線を向けた。






「・・・・・・・何がしたいか皆目検討がつかないのだけど。初めて出会った相手を館内にいれる


のも既に変なのに何故私が貴方のお茶に付き合わないと駄目なの?」







しごく全うな意見に、エルデルは納得せざる終えない。


自分も何故、今アルファの隣で優雅にお茶を入れているのか皆目分からない。






ただ、アルファだけはこの不思議な空間を少しも変に思わないのかフレアの意見に再度不思


議そうに首を傾げた。








「いいじゃないか。五感を使うこともたまには必要だよ。


お茶の美味しさを舌で楽しみながら、館の美を目で楽しむ。僕はとても気分がいいよ。」









一人満足げに笑う姿に、フレアは顔を顰める。どこか面倒そうにちらりとアルファへと視線を


向けてまだ帰るようには見えない仕草で館へとうっとりした視線を向ける彼にもうどうでもいい


かと諦めを含んだ目で静かに見た。








その視線にふと気づいたアルファが少し怪訝そうな顔でしかし見る間に柔らかく細めた目で


優しげにフレアを見返した。




「何かな?僕の顔に何かついているかい?」



あまりにじっと見るものだからそのベビーピンクの双眸へと笑いかける。


すると、いつもの貴婦人が浮かべる熱っぽい目とは異なる冷たい眼で睨まれたのでアルファ


は少しだけ困惑を見せた。





「・・・・・・いつもの対応と違うから少し困った。君は僕のことが気に入らないのかな・・・?」




少し寂しげな笑顔で問うアルファの表情をじっくりと観察してフレアが口を開く。


淡々とした無表情はアルファの微笑にも全く変化を見せず、エルデルは密かに感嘆した。






「やめて欲しいわ。その胡散臭い芝居。
そんな顔で私の心が揺らぐとでも?ひとの館に遠慮もなく入り込んでくるような人間がそんな
ことで気落ちするわけがないでしょう。どこかの馬鹿な女なら引っかかったかもしれないけど
私にそれは通用しないわ。」





静かにカップが持ち上げられる。
幼い見た目を裏切るフレアの言葉にエルデルが呆然としているのが目に入る。
アルファの目の前で一口、カップに口をつけるとフレアの喉元がこくりと動いた。




「美味しいわ。」



無表情にだが賞賛を与えられ、エルデルは密かにほっと胸を撫で下ろした。

そうして、こんな子供の反応を伺う自分に少しだけ驚く。





アルファは、そんなエルデルとフレアの様子を楽しげに見つめ、くすりと笑った。


本当に珍しい笑みは、心からのものでいつもの形だけの微笑とは違う。





先ほどの悲嘆な笑顔ではなく、心から楽しげに笑うアルファへとフレアはまた迷惑そうな視線

で持って返してきた。




「そうか。バレているみたいだね。だったら繕うのはもうやめようか。そちらの方がどうやら失


礼に当たるようだ。・・うんやはり君は面白いね。どうしようか・・館よりもとても気になる存在に


なりそうだよ。」




本気か戯れか分からぬ笑みを浮かべ、くすくす笑うと深い双眸が探るような視線を寄せてく

る。不躾なそれだが今のアルファにはとても面白くあり、更に笑みを溢してしまう。



斜め背後からのエルデルの何か言いたげな目を感じる。


多分、幼女相手に口説くような言葉を吐くのは否と言いたいのだろう。


しかし、アルファには目の前の幼女の姿が真実とは思いがたかった。







どこか不思議なほど落ち着いた雰囲気があり、幼い子供にありがちな好奇心旺盛な目も、


無邪気な仕草も全くない。


あるのはただ深い色合いを帯びた知的な目線と、慇懃無礼な物言いのように見えて、実は

アルファを警戒し、牽制しようとする言葉の数々。






それはどこか子供とは明らかなズレを感じ、アルファの中での違和感は更に深まる。


どちらにしろ好奇心は募るばかりで、牽制のつもりで吐きだすフレアの言は本人の狙いとは


全く別な方向に働き、アルファの好奇心を擽る。








「・・・・・・もういいわ。」


にこにこと無意識に笑顔を送っていれば、諦めた顔のフレアの言葉。


どうやら、自分の失礼な態度の数々が逆にアルファを楽しませているのに気づいたのだろう。






どこか疲れた顔のフレアを見て、アルファは密かに笑みを深めた。











ちくり。




とても気分よく館とフレアを鑑賞していると、どこかから密かな視線を感じた。



気づいた途端、ちくりちくりと何処か殺気も帯びたような視線が首もと辺りを刺す。






「?」




すと手を首にあて、突き刺さる視線を探るようにアルファが周囲へと視線をやった。



庭には薔薇、百合、水仙と多々の花が手入れされている。それがそよそよと風に揺れる


だけで、視線の相手は見つからない。







じっと見られているのは分かる。けれど不可思議な視線の相手はアルファに見つけることは


できなかった。




このような視線は初めてではない。伯爵としての地位を得てからは誰かに恨まれることは


少なからずあった。ほとんどがうまく退けてきたから、視線に慣れたアルファはこういう目に


敏感である。







しかし、程よく見渡せる庭の何処にも視線の主は姿を見せなかった。


じっと伺う。けれど、アルファの表情は落ち着き払ったものでフレアには気づかせぬように


笑顔は絶やさない。







数分ちくちくと刺さる視線の相手を探ろうとしたが、かたりと行き成り立ち上がったフレアに一


瞬気をとられる。






「そちらにばかり尽されては気分が悪いわ。

ケーキでも出してくる。」





そんな言葉を放ち、立ち上がるフレアはアルファが止める前にすでに背を向けて館の方へと


歩いていった。










「気を遣わしたかな?」




ふと、気づくと刺すような視線は消えていた。




アルファはそっと首元へと手をやった。不思議だ。本当に不可思議。



森の奥の立派な館に、そこに住む小さな幼女。不自然に突き刺さる視線。





「面白い。とても面白いね、エルデル君。」




密やかに笑う声。それは見つけたものが期待以上に面白いものだったことを言に現す。



主についていけずに、困ったような顔で立ち尽くすエルデルを背にアルファはカップを持ち上げ


静かにお茶を飲み干した。








「エルデル君。」


「はい?」




「おかわりを頼むよ。」











<戻る  進む>






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【2007/12/28 10:56】 | 中編小説 魔女の館 3 | トラックバック(0) | コメント(0)
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