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魔女の館 (5)
(5)兄の陰




足早にやってきたフレアの手元からとてもいい香りが漂ってくるのをアルファはにこやかな

笑顔でもって迎えた。


フレアの腕に抱いている皿の上にふわりとやわらかなお菓子がのっていることに少し目を

丸くする。手作りのように見えるその菓子は仄かな甘い匂いを漂よわせ、アルファの興味

をそそった。




「君が作ったのかな?とても美味しそうだね。」


フレアの眉がぴくりと動く。けれど表情は仮面を被ったように無表情のままで抑揚ない言葉

で呟いた。


「違う。私は少し手伝っただけ。これは・・・・私の兄が作ったものよ。」


歯切れの悪い口調で呟くフレアが少し不振だったが、それ以上にその内容に目を細めた。



「へぇ、お兄様がいるのかい?それは知らなかった。」


「ええ。・・・・・・とてもとても我侭な兄が一人・・・。ただ料理に対してだけならとても

腕がいいから、安心してちょうだい。」



かたりと机に置かれたケーキをナイフで切り分けようとするフレアだったが、意外に不器用

なのか少し手こずる様子を見せた。

周りに綺麗にあしらったクリームが疎らに飛び、せっかくのケーキが少し凹んでしまう。



見かねた、エルデルが後ろから手を差し伸べた。少し失礼かもしれないと躊躇した様子で


「やりましょうか。」


と問うエルデルをじっと見つめ、フレアは静かにナイフを渡した。







綺麗に切り分けていく菓子を横目でちらりと見るフレアを見て、アルファを声を忍ばせくすくす

笑った。忍ばせた甲斐もなく、笑っているのがバレバレであるのだが一睨みされてもあまり

気にしはしない。



あえて笑い返すアルファに呆れ、諦めたようにため息を吐いてフレアは何も言わなかった。





「もしかして、お兄様と二人で暮らしているのかい?」


この落ち着いた沈黙も、居心地がよかったのだが、ついつい興味心がアルファの口を開か

せる。兄と妹。このような組み合わせの二人がこの館に住んでいるとはなんとも珍しく不

思議だった。


勝手な想像だが、この館を初めて見た時、住んでいるのは年の老いた老人だろうと決めつけ


ていた。森の奥に住まう人間だなんてそういった者か相当酔狂な人間くらいだと。



「ええ、・・・・・・兄と二人で住んでいるわ。それが何か?」


言外に何か文句でもあるのかというようなニュアンスを含んだ物言いでじっと見つめてくる

フレアの目に、少し気圧されそうになる。

このような子供に気圧されるなどと、普段なら嘲笑るところだが、相手はフレアだと思うと

あまりプライドに触らなかった。

それが少し不思議である。



これ以上に踏み入られるのを嫌がるように表情を硬く崩さないフレアを見て、どうにかして

この無表情を動かしたいという気にさえさせる。


どうしてここまで気になるのか。自問してみても答えは出ない。

けれど、とにかく自分のかき集めて、かき集めてしてやっとできる興味心という感情が、

今目の前の子供に向かっていたら、どこからともなく湧き上がってくる。




「君のお兄様だったら一度お会いしたいものだ。ねぇエルデル君。」


エルデルが、静かに皿へと菓子を並べ終え、主人らの前に出している途中、


いきなりふられたことにたいして、少々どぎまぎと答えた。



「そうでございますね。きちんとケーキのお礼を言わなければ。」


律儀に答えるエルデルにフレアは冷めた視線を向けた。


ケーキを二人分机に並べたのを見て、フレアは口を開く。


「食べてもないのに言わないで。私はいらないから貴方が食べるといいわ。」



静かに席をたつ、フレアに慌てたようにエルデルが留めさせる。




「いえ、わたしは結構でございます。どうぞ召し上がってください。」


「いいから食べて。」



「いえいえ、お気にされずそのまま、あの。」


「いいから座って。」




そのような押し問答を何度か繰り返している内に、アルファがやおら立ちあがり3枚目の皿に


器用にケーキを乗せた。






二人の視線が物言いたげにアルファを見つめる。


にこりと整った顔で微笑えむアルファは何事もなかったように自分の席に座り直すと


当然のごとく二人に席を勧めた。




「喧嘩しなくとも3人分あるだろう。ほら。」



トントンと両隣を叩くアルファに二人はなんともいえない複雑な顔で呆然とした後、

大人しく席に着いた。









一口口にいれると、甘くしつこくない柔らかさと風味に頬が緩む。

それ程に美味しい菓子だった。貴族の高価な菓子より、よほどアルファを満足させる美味しさ

である。


「お兄様は天才だね。こんなに美味しいケーキは初めてだ。」




甘いモノが大好きであるアルファは気に入ったようでさきほどから4,5キレは口に入れて

いた。にこやかにお菓子を頬張るアルファとは対照的なのが両隣で険しい顔をする二人で

ある。天敵でも見るような顔で菓子をじっとみて少量を口にする。


「うぅ・・・・・」

「甘い・・・・」



同じタイミングで、そう口にした二人は同時に顔を見合わせた。


両者とも、貴方もか・・・・・というように目でコンタクトをとった。



アルファの美味しそうな顔を恨めしげに見るエルデルと、ぱくぱくと口に入れ見る見る内に


ケーキを平らげるアルファに、顔を引きつらせるフレア。




アルファは最後の一切れを綺麗に食べ終えると、見られているのにふと気がつき、少し


首を傾げた。



「どうかしたかい?おや、二人ともペースが遅いね。」


フレアが静かに手を止めて、ぷいと首を背けた。


「貴方を見ていたら食欲が無くなったわ。」


「甘いのが苦手だったとは、気づかなかったな。子供はこういうお菓子がすきなもの

なのにねぇ・・・・・・・・・」




ずばり言い当てられ、少しむっとしたが別に隠すことでもないと思いなおしたのか、フレアは


頷きながら返した。




「ええ、苦手よ。それから子供子供とさきほどから失言だわ。

私を子供扱いしないでちょうだい。」




そう言いながらも、ずっと大人びた風でいた彼女にしては、子供っぽい仕草でちらりとこちら

を睨んだ。その仕草が少し可笑しい。



手を口元へやり、こみ上げてくる笑い我慢しているとそれに気づいたフレアがむっと


顔を赤く染める。


さきほどから、感情の変化が表情に少し表れる様が見受けられる。それが楽しかった。


「子供じゃないのかい??」


「もう立派な女性だわ。言っておくけどこれは、借りのす・・・・・・っっ。」



変なところで言葉を切った、フレアをもう一度問い正そうとしたけれど、それを聞く前に

タイミング悪く、反対側の隣から低い声で阻まれた。





「アルフォール様・・・貴方、わざとですね。」


恨めしげに睨まれて、アルファは困ったように見返す。





エルデルが綺麗にケーキを食べおえ、息絶え絶えにこちらを睨んでいる。


勿論、付き合いの長い、エルデルの苦手なモノなどすっかり把握しているはずのアルファ


が甘いケーキを突き出したことへの恨み言だろう。




何か言いたげだが、フレアを目の前にしていいずらそうに口を閉じる。


「これでお兄様にお礼が言えそうだね。あははは。」



アルファは、笑ってその場を誤魔化すことで乗り切った。





「そうだお兄様だけど、ご挨拶させていただけないかな?この屋敷の住人であるのだし、

庭にまで失礼したのだから少しだけでもお礼をね。菓子のお礼もしていないし。」


隣のエルデルもこれには頷く気配を見せた。


アルファが聞くと、フレアの眉がぴくりと動く。


「・・・・・今は駄目だわ。・・・・足が悪くしていて館から出られないの。

そういうことは気にしなくていいから、さっさと見学してお帰りいただきたいわ。」



なんの躊躇もなくずばりと言い切ったフレアの冷たさに、しかし少しも怯まずにアルファ


は目を細めてふわりと揺れる髪を一房持ち上げた。



「つれないな。せっかく少し仲良くなれたと思ったのに・・・・フレアは本当に冷たい。」





低く、耳元で囁いたらフレアの動きがぴたりと止まった。


その様子に不思議そうにじっと見下ろしていると、耳元が赤く染まったような気がして更に


首を傾げて覗きこんだ。



「フレア?どうかしたかい??」




黙って動かなくなった彼女がさすがに気になり声をかける。


応対がないので、ちらりと困ったようにエルデルを見たが、彼もただただ口を開閉するだけで


何の役にも立たない。




「困ったな。・・・・・ごめん。調子に乗りすぎたかな。機嫌を直して。

フレア。ねぇフレア。」




宥めるように口にして、フレアに更にそっと近づこうとした時に、いきなり手元にピリッと痛みが

走った。



剣呑な顔で手元を見ると手の甲から血が滲んでゆく様が目に映った。





「あ・・・れ?」


それを怪訝に思う間もなく、いきなり足元を何かが通った気配がする。


驚いて、注意を足元へと向けると、何か黒いモノが横切ったのを目にした。


それは素早い速さで通り抜けたかと思うと、タッと高い音を響かせ、アルファの目の前に


飛び上がって着地した。



俯いていたフレアの膝に一匹の黒猫が我が物顔で座りこんでいた。










<戻る  進む>

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【2008/01/26 00:40】 | 中編小説 魔女の館 5 | トラックバック(0) | コメント(0)
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