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魔女の館 (7)
(7)貴族の事情





楽しげにテーブルの周りを囲み、会話を楽しむのは誰一人も違いなく身奇麗な装いをした



貴族達だった。男性はダークスーツにこ洒落た帽子。女性は美しいドレスに髪飾りとどの人物



も他の貴族に負けじと、高価なもので自分を飾り付けている。




美しく高貴な集まりだと自分たちは思い込んでいるのだろうが、それでいて楽しそうに



話すその内容は高貴とは程遠いものだ。



話し方は貴族だけあって、上品で淑やかなふうであるが、それでいて実は



下世話な会話が繰り広げられている。






嫌いな人物の陰口。あまり公にはできない秘恋の噂に、自慢話が大半。




暇を持て余す貴族らにとって、このパーティはうってつけの場だったようで、皆



優雅にワインを片手によくしゃべった。





お互いに笑いあっているが、心の底から笑いあう者たちもごく僅かだ。



楽しげな中にもやはり一線の壁が引いてあり、どこかお互いに牽制しあう。



どんなににこやかに笑いかけてこようが、内心では何を考えているか分からない。笑いながら



もギラギラとした視線を常に持って回りを見渡している人物、笑みの中野心をうまく隠し、



柔和に笑っている人物。自分より高い身分の者とどうにかして関係を持とうと必死な人物



と人ぞれそれの思いの下、世話しなくおしゃべりに興じる。





その様子をちらりと見渡しながら、この場にうまく溶け込んでいる者の姿が在った。



作りものの笑顔とは思えない柔和な笑みで、周りに溶けこんでいるが、その笑顔の下



内心はうんざりした心境だった。



いつものように、自分主催で開かれるパーティ。媚びた態度で周りに集まってくる、名の知れた



貴族たち。遠巻きに羨ましげにそれを見つめる、下位の貴族の羨望と嫉妬の視線。







それは、今に始まったことではなく見慣れた光景であったが、アルファにとって鬱陶しさ



以外の何者でもなかった。へらへら笑う、周りの貴族は自分よりも一回りも二回りも齢の



いった者。にも関わらず、アルファへと媚びたような視線を送ってくるのは、やはりクラウンの


名の大きさだろう。




元来続く、クライン家の家系は大貴族と呼ばれる類のものだ。貴族の中でも5指の中に入る



名門中の名門家。仲良くなって、関係を持っておいて損はない相手なのだ。



それが分かっているからこそ、遠巻きからの羨望の視線と周りのへらへらとした笑い声が


煩わしい。




アルファは、引きつりそうになる笑みを浮かべながら、そろそろいいだろうかと考えた。



いつものように、不自然にならぬよう気をつけながら、周りを見渡し時計を目に止める。



そして、アルファが笑顔であるのに気をよくし、全くもってどうでもいい話を楽しげにする



老年の貴族たちに合づちを打つそぶりを見せながら、くらりとヨロけて見せた。













「お、おや、大丈夫ですかな。クライン伯爵、どこかお加減でも・・・」



「いや、少し眩暈が・・・」



大丈夫だ、というように笑って見せると今度はふらりともう一度よろけた後、がくりと


膝を折った。





驚いて、周囲からも声があがる。



「大丈夫ですか?クライン氏っっ」


「これはいけない。お加減が優れないようだ。」


「おい、そこの。手を貸せ。」



口々に慌てた声を出す周りの貴族達の行動を遮るように、アルファが弱弱しく笑い



立ち上がった。





「・・・いえ、大丈夫。と言いたいところですが、申し訳ない。


情けないことですが、少し身体が思わしくないようだ。皆さんの楽しい宴を邪魔してはいけ


ない。そういうわけだから自室でゆっくり休ませてもらってもよろしいかな?」




さらりと髪の毛を払い頭に手を寄せ、辛そうな表情で周りの貴族らを見た。



その表情に遠巻きにしていた、ご婦人方がのぼせたように頬を染める。



辛そうな表情が整った容姿に色気を持たせ、数人の貴婦人が恥ずかしげに目を逸らした。



それを全く意に介さず、アルファは返ってくる言葉を待った。






「勿論です。お加減が悪いならゆっくりと自室で休んだ方がいい。」



「ええ、顔色が悪いようだ。すぐにでも横になるべきでしょう。」



「あ、ああ、わたしでよければ肩を貸しましょう。」







口々に、心配げに言葉を継ぐ者たちに、予想どおりの言葉を聞き、アルファは笑み


を溢す。



しかし、それはすぐによわよわしげな笑みへと変換され、こう告げた。



「いえ、心配には及びません。自室はすぐそこにありますので。


では、お暇させていただきます。気になさらず存分に楽しんでください。」



柔和な笑みに、一部の貴婦人は胸を抑え、



周りの貴族らは心配げにアルファを見るだけで、一瞬零れた意味深な”笑み”には


誰一人気がつかなかった。







丁寧に挨拶した後、くるりと踵を返す。



歩く間に、行き違う貴族たちの羨望の視線を一身に浴びながら、少しも気にすることなく



アルファは騒がしいパーティを去った。



ドアを出るまでは、足元がおぼつか無い様子で、周囲の人間から心配げな視



線を浴びていたが、誰もいない廊下に出るとアルファはすっと背筋を伸ばす。



カツカツという、さきほどまでとは別人のようなしっかりとした足取りで急くように早足に



その場を去っていった。


























アルファがパーティから辞した後、貴族らは少しだけ動揺を見せただけで元通りの話しに


興じる。このようにアルファが途中で抜けることは今日が初めてのことではなかった。








「あぁ、大丈夫かしら?クライン様、いつにも増して具合が悪そうで。」



「ええ、最近特にご調子を崩されていらっしゃるみたいで心配ね!」



「このような場に出てくるのもお久しくて、驚いたわ~。」



「ええ。私たち、幸運よ。帰ったら自慢してさしあげよう。」








きゃぁきゃあと騒ぐ、年若い貴族の娘たちの輪に周りにいた


一部の貴族たちが眉間に皴を寄せる。




さきほどまでこの場にいたアルフォールの姿をあまり歓迎せずに見ていた青年貴族が



数人、彼女らの騒ぎように嫌な顔を覗かせた。




ただ、それはクラインの名の重さとともに、口には出さない。否、出せない。



けれど、その中でただ一人、貴族にしては短髪な茶髪になかなか目つきの鋭い


青年がぞんざいな口調で騒ぐ彼女らに噛み付いた。



「けっ、言ってろ。どうせ、てめえら顔しか見てないんだろう?」




低く馬鹿にしたその声に、さきほどまで騒いでいた彼女らが驚いて振り向く。

青年の姿を目にとめ、初めは驚いていた貴族の娘らの顔にむっとしたものが浮かぶ。




「顔だけってどういう意味かしら?」


「いきなり入ってくるだなんて不躾だわ。」




非難の目に晒されても、青年は目つきの悪い顔を余計に鋭くして、睨む。



「馬鹿女どもが騒いでると思ったら、あのひ弱で貧弱な奴がああだこうだって話?


ああ、つまんね。あんなんの何処がいいやら、俺にはさっぱりだ!」



その乱暴な口調と、きつい目つきに少し怯んだものの、馬鹿にしたような口調に反感が芽生える。



じっと牽制するように睨みあう二組にぴりぴりした空気が発生した時、思わぬ場所から


止めが入った。



「こら駄目でしょ、エリディアスったら迷子かと思ったら、こんなところで油を売っていたの?」



「い、てててててっぇよ」


びっくりした貴族の娘らの目の前では、青年が思いっきり耳を引っ張られている。


思わず出た情けない声と、その耳を遠慮なく引っ張る可憐な手の主を驚いた顔で見ていた。





「あ、アルテナ様!?」



娘らの中の一人が呆然としていた中、なんとか立ち直って耳を引っ張る少女の名を呼ぶ。



同じくして、なんとか耳の痛みに耐えるエリディアスの声が彼女を呼んだ。



「いてえっつってんだろ!アルテナ!!離せこら。」



思いっきり手を叩きおとし、エリディアスは得意の鋭い目で殺気を滲ませる。


「しかも、誰が迷子だ!おまえがあんまり鬱陶しいのに囲まれてるから、さっさと


逃げてきただけだ!」



ちらほら、その貴族らしからぬ口調に周りの視線が集まってくる。


迷惑そうな顔で見ていた貴族の目が、エリディアスの隣に立つ少女の上で驚いて止まった。






「エリディアスったら、焼き餅なんてカワイイわね。」

美貌の少女が青年に笑いかける。誰もがはっとせざる終えない表情で楽しげに笑った。


「なっ、ちがっ!!!」


思わず、返答する前にアルテナは貴族の娘たちへと目を向けた。



「貴方たち私のこと知ってらっしゃるの?」



困惑した顔でアルテナを見つめる娘たちへと首を傾げる仕草に少女とは思えない艶めかしさ


を感じて、声なく息を呑んだ娘たちはそれでもなんとか無言でこくこくと頷いた。




少女の名はアルテナ。アルテナ・ディアドフィード。



長いウェーブのかかった髪と、どこか色気を漂わせるけだるげな容姿。


そして、ディアドフィードの大貴族の名で、アルファと同じく人気を誇る。


アルファの婚約者でもあった。







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【2008/05/31 23:23】 | 中編小説 魔女の館 7 | トラックバック(0) | コメント(0)
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