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魔女の館 (9)
(9)薔薇園の迷子






「兄さん~兄さん何処?」






か細い声で、少年は真っ赤な花びらの隙間をひたすら進みながら彷徨っていた。



もう喉が痛いほど良く知る身内の名を呼ぶが、当の人物どころか誰の姿も見当たらない。



途方に暮れながら、涙ぐんだ目元に力を込め必死で涙をこぼさないようにしながら見渡すと



薔薇園がただっ広く見えるだけでどうすればここを出られるのか検討もつかない。






「うぅ・・・・・・なんで抜け出せないの?兄さん・・・何処?」



涙を必死で堪え、少年はひたすら薔薇道を練り歩いた。必死だった。


初めて連れられた、豪華なパーティに恐縮し、知り合いだった少女があまりにその場に


溶け込み、知らない貴族たちに囲まれていたものだから少年はその場の居づらさに外の


空気を吸いに一人出てきたのだ。





けれど、それがそもそもの間違いだった。



その後の行動が今薔薇に囲まれ彷徨い歩いている現状を作ってしまうきっかけとなってしまった。



いつの間にか自分の傍から離れて行方不明になっていた兄を心細さから探している内に



気づけば人通りのない薔薇園に足を踏み入れてしまう。






あまりの美しさに見惚れながら歩いている内に出口が分からなくなり、方向感覚の


ない少年は、それから半刻ほどその中を彷徨っている。




迷路のように絡まった蔦が進行方向を塞げば、違う道を探しそうこうしながら曲がって進んで


を繰り返す内に完全な迷子である。




こんなところで泣いてしまうのは恥ずかしいからと、涙を我慢すればするほど、出られない恐


怖感や寂しさが襲ってくる。










「いっ・・・・・・」




思わず手を引くとツーっと真っ赤な血が滲み、少年がいっそう悲壮な顔になり目元に浮かぶ


涙が我慢できずに、流れおちた。涙をながすと同時に一気に悲しさが押し寄せてくる。





もう日が落ちてきて、空は赤らみ夕焼けがとても綺麗だ。


けれど、少年の心は広い場所に一人取り残された孤独感で一杯であり、心細さで締め付


けられ暗く沈む。







誰でもいいから人に出会いたいと、少年は切実に思い、止まらぬ涙を拭いながら嗚咽を


もらす。ひくりひくりと泣いていると、思わずびくりと驚く音が前方から聞こえた。









がさっ。がさがさ。



「・・・・・・・・・!?」




思わず、ぴたりと立ち止まる。薔薇が揺れ、さわさわと音が鳴る。




少年は息を呑んでその場に立ち竦んだ。




泣いていた声も目の前の状況に怯み、口を閉ざす。





「・・・・・・・・・・・・・・兄さん?」




少しだけ期待を込めて呼んでみるが、返答はなくがさがさといまだに揺れる音が耳に聞こえる。





少年は、何か分からぬものに対しての恐怖感に身を竦め、その場にじっと立ち止まった。




音が近づく。少年のすぐ傍の薔薇の葉が揺れる。





ひくりと声を漏らすと、がさっと揺れるそこから黒いものが飛び出してきた。






「ひっわっ!!!」




思わず情けなく尻餅をついた少年の目の前、小鳥が数羽、ばさばさっという音とともに


羽ばたいていった。





呆気にとられてその様子を見上げていた少年が、驚きと緊張感、それから少しの期待を裏切られ



た気持ちで、しゃがみこんだまま身を震わせる。



ひくひくっとしゃっくりをあげながら、途方に暮れ泣きじゃくっている少年は精神的にもう限界


で、ぐずぐずと気持ちのままに泣き出した。ときおり、兄を呼ぶ声が辺りに響く。





力なくしゃがみこみ泣く少年は、だからこそ気づかなかった。羽音を響かせて飛び立った



小鳥たちを途方に暮れた目で見上げていた少年の後ろの薔薇もまた揺れていたことに。





泣きじゃくる少年の肩にぽんと冷たい手の感触があった。






「わっ!!!?」





思わず、声を上げて驚く少年はいきなり自分の肩に置かれた手に叫びそうになった。



その気配を察知したのか、肩の腕が素早い動きで、すかさず少年の口元を覆う。




「ひぃ・・・た・・・たすけ」





思わず必死で暴れようとするが口を覆う腕はしっかりと固定され、少年の口を塞ぐ。



そして恐怖感に暴れる少年は次の瞬間、静かな声音に静止された。






「しっ、叫んでは駄目、何もしないから落ち着いてくれるかい?」





その声音があまりに静かでこの状況に似合わない穏やかさを持っていたため、少年は


思わず暴れるのをやめた。



困惑ぎみに大人しくなると、ゆっくりと口元を覆う、腕が離れていく。







「こんな場所でいったい何をしているのかな?そんななりをして薔薇泥棒だなんて言わな


いだろう?」




落ち着く声音に、どこか柔らかい感じが耳に心地よく少年の恐怖心を少し和らげる。



すると、涙をみられまいとする少年の頭に優しく腕が置かれ、数度安心させるように



撫でられた。





「君はもしかして迷子?」




優しげな声音に思わず頷いて答える。何か言おうとしたが思わず言葉が詰まり、鼻をすする


だけで精一杯だった。






くすりと笑い声が少年の耳に届く。



それが少年の子供なりの羞恥心を煽り、涙を拭って顔を上げた。





「ふあっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」





思わず空気が洩れるだけのため息のような声が洩れる。少年は見上げた場所に顔を



固定したまま、そのままの格好で固まった。






思わず、瞬きを繰り返し自分の目の前にいる声の主をじっと見上げた。




思わず息を呑むほど整った造作の人物に、一時思考を停止したように固まった少年はふと



寝る前にぶっきらぼうな声の兄が呼んでくれた物語に出てくる王子様が思い浮かんだ。






金髪の柔らかそうなねこっ毛に碧眼の優しげな目元。服装は真っ黒でお世辞にも煌びやか



とは言い難かったが、その姿でもなお整った顔は少しも褪せずに、凛としていて思わず



目を引く。






「どうかしたかい?」





あまりにじろじろ見るからか、不思議げな顔で見下ろされ少年は思わず困惑する。




言葉に困って、焦る少年は思わず口を噤み、じっと魅入っていた顔を逸らして、困ったように



答えた。






「お兄ちゃん・・・・・・誰??」




聞いたときに思わずぎゅっと腕を握り締め、いたっと呻いた。



薔薇の棘のせいで負った怪我がぴりっと痛む。







「・・・・・・・・・・ちょっと見せて。」









まだ子供である少年でもわかるような整った顔の青年が言うと、黙って血の滲んだ指を差し出す。






「これは酷いね。薔薇の棘がささっている。ちょっと痛いけど我慢しておくれ。」




そう言われると、少年は忘れかけていた棘の痛みを感じ、弱々しげに青年を見上げた。





「ごめん、応急処置だから少し痛むよ。」





そういわれてぎゅっと目を閉じると、手早く棘が抜かれた。一瞬痛みが走ったがとれた


棘を見ると少年は少し安心できた。



と同時に精神的な安心感も感じて一気にぼろぼろと涙が落ちてきた。気が緩んだのか



必死で殺していた嗚咽が自然と漏れ出し、しゃっくりをあげながら泣き出してしまった。






「痛かったかい?ごめんごめん。よく我慢したね。」


優しく肩をたたかれながら、その声音を聞いていると初めて会ったとは思えないほど落ち着く


安心感に少年が密かに安堵する。














少し落ち着いてきてから少年は人前で泣いてしまった自分を恥ずかしく思いなが


ら口を開いた。








「ありがとう・・・・・」



おそるおそる覗いながら、礼を述べると、優しげな笑顔でにこりと笑った。



少し周りを覗うような仕草をしながら、悩んだ後、青年は静かに手を差し出した。





「僕は、アルファ。迷子なんだね。だったら丁度薔薇園を抜けるついでだから、そこまで


送ってあげるよ。ただしあまり大きな声を立てないようにして欲しいんだけど・・・」





蒼い目が細まり、柔らかい声で優しげに言われ、少年の頬が緩んだ。



これで帰れるという安堵に嬉しくなり、同時に大きな声を出さないようという注意に気を引き締める。



何か事情があるのかなと思っただけで深くは追求しなかったが、青年はどこか


周りを覗うような仕草をとっていたので、それを不思議に思いながらも必死になって頷いた。





どこかおそるおそる、青年に近づいて覗うように見た後そろりと差し出された手を握る。







「よし、疲れてるかもしれないけど、ついてこれそうかい?」




「う、うん。大丈夫。」



こくりと頷くのを確認すると目の前の青年は少年の手を引いて歩き出した。









片手で少年の怪我のないほうの手を握り、もう片方には薔薇の花を数本大事そうに携え


アルファは薔薇園の出口へと、静かに歩んでいった。













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【2008/08/07 00:29】 | 中編小説 魔女の館 9 | トラックバック(0) | コメント(0)
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