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魔女の館 (3)
(3)不可思議な視線





「美しいな。」





静かに館を見つめながら、アルファは優雅な仕草でこくりと喉元を振るわせた。


目の前には、可憐な容姿の幼女が座る。ベビーピンクの双眸とふわりと巻いた黒髪に真っ黒


なドレスが印象的。しかしその表情は、きらきらと光る幼く無垢なものではなく、大人びた仕草


で呆れた目をアルファへと向けていた。



現在、アルファのいる場所は館の前の大きな庭の一角。




手にもつのは、午後に開かれるはずのお茶会で仕様するはずだった高価なカップである。






「エルデル君。さすがに君の入れたお茶は美味しいね。」



静かに褒められると、アルファの隣で控えていたエルデルが複雑そうな表情を浮かべながらも


やはり嬉しげだった。


「いえ、エリダに比べたらまだまだです。」




アルファに心辺りのあるその名は、エルデルの一つ年上の姉である。


現在、アルファの父親の世話係であるエリダは、アルファも数たび顔を合わせたことがあるよ


く知る人物だった。









「そうだね。エリダは別格。けれど君もなかなか腕をあげたじゃないか。


さすが僕が認めただけはある。ん?フレア。君の口には合わなかったかな?」




さきほどから一口も口をつけようとはしない目の前の娘にアルファは酷く不思議そうに声を


かけた。立ち上る湯気が程よい熱さであることを知らせる。湯気、昇りゆく様をフレアは、この


目の前の幼女は、見つめた後アルファへと胡乱な視線を向けた。






「・・・・・・・何がしたいか皆目検討がつかないのだけど。初めて出会った相手を館内にいれる


のも既に変なのに何故私が貴方のお茶に付き合わないと駄目なの?」







しごく全うな意見に、エルデルは納得せざる終えない。


自分も何故、今アルファの隣で優雅にお茶を入れているのか皆目分からない。






ただ、アルファだけはこの不思議な空間を少しも変に思わないのかフレアの意見に再度不思


議そうに首を傾げた。








「いいじゃないか。五感を使うこともたまには必要だよ。


お茶の美味しさを舌で楽しみながら、館の美を目で楽しむ。僕はとても気分がいいよ。」









一人満足げに笑う姿に、フレアは顔を顰める。どこか面倒そうにちらりとアルファへと視線を


向けてまだ帰るようには見えない仕草で館へとうっとりした視線を向ける彼にもうどうでもいい


かと諦めを含んだ目で静かに見た。








その視線にふと気づいたアルファが少し怪訝そうな顔でしかし見る間に柔らかく細めた目で


優しげにフレアを見返した。




「何かな?僕の顔に何かついているかい?」



あまりにじっと見るものだからそのベビーピンクの双眸へと笑いかける。


すると、いつもの貴婦人が浮かべる熱っぽい目とは異なる冷たい眼で睨まれたのでアルファ


は少しだけ困惑を見せた。





「・・・・・・いつもの対応と違うから少し困った。君は僕のことが気に入らないのかな・・・?」




少し寂しげな笑顔で問うアルファの表情をじっくりと観察してフレアが口を開く。


淡々とした無表情はアルファの微笑にも全く変化を見せず、エルデルは密かに感嘆した。






「やめて欲しいわ。その胡散臭い芝居。
そんな顔で私の心が揺らぐとでも?ひとの館に遠慮もなく入り込んでくるような人間がそんな
ことで気落ちするわけがないでしょう。どこかの馬鹿な女なら引っかかったかもしれないけど
私にそれは通用しないわ。」





静かにカップが持ち上げられる。
幼い見た目を裏切るフレアの言葉にエルデルが呆然としているのが目に入る。
アルファの目の前で一口、カップに口をつけるとフレアの喉元がこくりと動いた。




「美味しいわ。」



無表情にだが賞賛を与えられ、エルデルは密かにほっと胸を撫で下ろした。

そうして、こんな子供の反応を伺う自分に少しだけ驚く。





アルファは、そんなエルデルとフレアの様子を楽しげに見つめ、くすりと笑った。


本当に珍しい笑みは、心からのものでいつもの形だけの微笑とは違う。





先ほどの悲嘆な笑顔ではなく、心から楽しげに笑うアルファへとフレアはまた迷惑そうな視線

で持って返してきた。




「そうか。バレているみたいだね。だったら繕うのはもうやめようか。そちらの方がどうやら失


礼に当たるようだ。・・うんやはり君は面白いね。どうしようか・・館よりもとても気になる存在に


なりそうだよ。」




本気か戯れか分からぬ笑みを浮かべ、くすくす笑うと深い双眸が探るような視線を寄せてく

る。不躾なそれだが今のアルファにはとても面白くあり、更に笑みを溢してしまう。



斜め背後からのエルデルの何か言いたげな目を感じる。


多分、幼女相手に口説くような言葉を吐くのは否と言いたいのだろう。


しかし、アルファには目の前の幼女の姿が真実とは思いがたかった。







どこか不思議なほど落ち着いた雰囲気があり、幼い子供にありがちな好奇心旺盛な目も、


無邪気な仕草も全くない。


あるのはただ深い色合いを帯びた知的な目線と、慇懃無礼な物言いのように見えて、実は

アルファを警戒し、牽制しようとする言葉の数々。






それはどこか子供とは明らかなズレを感じ、アルファの中での違和感は更に深まる。


どちらにしろ好奇心は募るばかりで、牽制のつもりで吐きだすフレアの言は本人の狙いとは


全く別な方向に働き、アルファの好奇心を擽る。








「・・・・・・もういいわ。」


にこにこと無意識に笑顔を送っていれば、諦めた顔のフレアの言葉。


どうやら、自分の失礼な態度の数々が逆にアルファを楽しませているのに気づいたのだろう。






どこか疲れた顔のフレアを見て、アルファは密かに笑みを深めた。











ちくり。




とても気分よく館とフレアを鑑賞していると、どこかから密かな視線を感じた。



気づいた途端、ちくりちくりと何処か殺気も帯びたような視線が首もと辺りを刺す。






「?」




すと手を首にあて、突き刺さる視線を探るようにアルファが周囲へと視線をやった。



庭には薔薇、百合、水仙と多々の花が手入れされている。それがそよそよと風に揺れる


だけで、視線の相手は見つからない。







じっと見られているのは分かる。けれど不可思議な視線の相手はアルファに見つけることは


できなかった。




このような視線は初めてではない。伯爵としての地位を得てからは誰かに恨まれることは


少なからずあった。ほとんどがうまく退けてきたから、視線に慣れたアルファはこういう目に


敏感である。







しかし、程よく見渡せる庭の何処にも視線の主は姿を見せなかった。


じっと伺う。けれど、アルファの表情は落ち着き払ったものでフレアには気づかせぬように


笑顔は絶やさない。







数分ちくちくと刺さる視線の相手を探ろうとしたが、かたりと行き成り立ち上がったフレアに一


瞬気をとられる。






「そちらにばかり尽されては気分が悪いわ。

ケーキでも出してくる。」





そんな言葉を放ち、立ち上がるフレアはアルファが止める前にすでに背を向けて館の方へと


歩いていった。










「気を遣わしたかな?」




ふと、気づくと刺すような視線は消えていた。




アルファはそっと首元へと手をやった。不思議だ。本当に不可思議。



森の奥の立派な館に、そこに住む小さな幼女。不自然に突き刺さる視線。





「面白い。とても面白いね、エルデル君。」




密やかに笑う声。それは見つけたものが期待以上に面白いものだったことを言に現す。



主についていけずに、困ったような顔で立ち尽くすエルデルを背にアルファはカップを持ち上げ


静かにお茶を飲み干した。








「エルデル君。」


「はい?」




「おかわりを頼むよ。」











<戻る  進む>






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【2007/12/28 10:56】 | 中編小説 魔女の館 3 | トラックバック(0) | コメント(0)
霊解―レイカイ― 
霊解―レイカイ―




プロローグ



サイド―総志―






悲しかった。




あの日母親が声を押し殺して一人で泣いていたことが




僕には無償に悲しかった。














だから身につけた。







うまく生きていくために笑って、いい子を演じる方法。






そのために僕は心を押し殺す。








そうすれば母親が喜ぶ気がして・・・・・・・・・







笑った顔が見たくて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・










でもそれでも僕の憎しみは消えなくて。母の笑顔を奪ったあいつが許せなくて。








歪んだ気持ちは、日に日に育っていく。










だからおまえに会った時、初めは許せなかった。










似た境遇にいて、強く生きてるおまえと







卑屈に生きてる自分が・・・・・・・・・・・・・・どうにも許せなかった。








でもおまえは僕に言ったよな? ―――嘘くさい顔で笑うな―――







初めて偽者を見つけられてたぶん僕は怒りよりも安堵した。







増加する憎しみから解き離してくれたおまえに、だから感謝した。












次は僕の番だと・・・・・・・・・・・対等でいたいと思った僕をおまえなら笑うだろうか?
















サイド―鴇夜―







物心ついた時に、俺の傍らにいたのは妹だけだった。






だから、俺はこいつを守ることだけ考えた。









周りにどう思われようが構わなかった。









妹を守るためなら、何を犠牲にしたとしても良心はいたまなかった。










だから初めてお前に会ったとき、笑った顔が不気味だと思った。












だから俺は言っただろう?  ―――嘘くさい顔で笑うな―――











でも後悔したんだ。










何を言われても何の感情も浮かばなかった俺が









今にも泣きそうなくらい辛そうに顔を歪めたお前を見て自分が言った言葉を始めて後悔した。









その時、忘れきっていた良心が俺にもあったんだな・・・・・・・・・・なんて








ほっとした。











だから俺はそんな顔しなくていいように、居場所を作ってやりたかった。










綾とおまえの・・・・・・・・そう言ったら、お前は笑うか?

















                                                 ――end―――

【2007/12/22 21:01】 | 長編小説 霊解―レイカイ― プロローグ | トラックバック(0) | コメント(0)
魔女の館 (2)
(2)館の住人





蒼の双眸がこちらへとじっと視線を寄せる。



門を開く少女は、じっとエルデルを観察した後その視線をアルファへと向けた。



アルファが珍しく笑みを向けてみると、それまでの静かな観察眼が微かに嫌そうに揺れる。





珍しい反応はアルファの好奇心を擽り、むっとするどころか楽しげに更なる笑みを深めた。



あまりに美しく聳え立つ館は、アルファの興味対象であったが、この館に住まう幼女までも


に興味が沸くとは思いもしなかった。



美しく曰くありげな館に住まうのが小さな幼女だというのにも驚いたが、更なる驚きは



この子供の仕草や態度の方である。



貴族の中にはそれに不釣合いな容姿のものが意外と多い。しかしそれを金を撒き散らして着


飾ることで、覆い隠しているのが現実だ。



身を飾ることで貴族らしさを取り繕う者とは違い、アルファには貴族然とした佇まいと容姿が


あった。それは街娘どころか他の貴族らの子女ですらうっとり見とれさせてしまうような容貌である。





初めてアルファを見る人間の反応は差はまちまちにしろ必ずといっていいほど、立ち止まって


ほおける。いつもならうっすら上気した顔で数秒固まってしまうはずなのだが、この館の幼女


は視線を初めて絡ませた時の反応は全く異なるものだった。




そう、顔を顰めたのだから。







「・・・・・・・・・・・・何か御用?」





正に口調は淡々とし、抑揚ないものだった。静かにこちらを見る目は寒々しく冷たい。




そう聞かれ、アルファの身分を知っているエルデルは思わずむっとした。


主人へと傾倒せずに対応した幼女の態度には少しだけ驚いたがそれにしても貴族に対して


失礼きわまりないこの態度は無礼である。







思わず一歩前に出かけたエルデルを片手で制したのはアルファだ。


エルデルがその表情を目にして、やや表情を硬くした。



あまりに機嫌がよさげに笑みを浮かべるアルファは、じっと幼女を見ながら口の端をあげる。






その目には興味対象である彼女しか映っておらず、エルデルの中では警報が鳴り響く。



こうなってしまうと主人はもうそこしか目に入らず、何を言っても聞き入れてくれない


のだと、少し前の経験からエルデルは分かっていた。









母ゆずりであるエメラルドの双眸を幼女へと向け、アルファは柔らかく微笑む。


形容するなら天使のような純白の柔らかさを持つ微笑みである。


けれど、またもや彼女から返る反応は、嫌そうに顰められたもののみだった。




「用って程ではないのだけどね。ただじっと目に映った館に心奪われてね。


君が出てきた時はびっくりしたよ。このような場所で誰と住んでいるんだい?」






じっと見つめると何故か逸らされる視線。



しかしそれはいつもの恥じ入った末の反応ではなく、ただアルファと目を合わせているのが



単純に不快だといいたげな表情だ。



普通貴族なら怒りを抱くであろうその態度だが、アルファはむしろその新鮮さが良かった。



可憐な容姿の割りにあまり表情を変えない彼女が自分をみて嫌そうに顔をゆがめるのはむし


ろ楽しい。無礼とは思わない。ただ面白い。


常日ごろ日常に興味が希薄なアルファにしては珍しくこの幼女に構いたくなった。








「そんなの貴方に関係のないことよ。貴族って本当に詮索が好きなのね。馬鹿な貴族は嫌い


だけど歪んだ人間ってもっと嫌。」




あまりの暴言に一瞬唖然とする。


隣で同じく呆然としたエルデルの頬が次第に赤らむ。



「っっ、無礼なっっ・・・・・」



主人を明らかにさけずむ言葉に憤りのまま声を荒げたエルデルはしかし吐き出そうとした


怒りを留めずにはおられなかった。





「くっっっ・・・・・・・・・」




隣から聞こえた声に一瞬気をとられると、思わぬものを見てしまった。






「くっっっふははあはははは。っあははははっ。」



正に腹を抱えるようにして笑うのは見たこともないほど紅潮させた顔で笑うアルファの姿だった。





何がおかしいのか笑う主人にエルデルの呆気にとられた目が向かう。


呆然と見ているのはなにもエルデルだけではない。


暴言を吐いた本人でさえ、訝しげにアルファをじっと観察している。






大きな笑いを響かせた後、涙目をさりげなく長い指で取り除くと、アルファは、変人を見るよう



な二つの視線へと視線が絡んだ。



まるで、おかしな人物を見るような視線とはちあい、二人の顔をみやって更なる笑いの発作を


感じる。



しかし、これ以上変に思われたらいけないというアルファの妙な自制心のおかげでなんとか


笑いは収めることができた。







「ふふっ失礼。つい言われなれない暴言に思わず笑ってしまったよ。


そうだね。馬鹿な貴族は嫌いなのかい?残念僕は馬鹿ではないよ。」





アルファの不敵な声が響く。


楽しげに紡ぐ言葉に小さな幼女が年の割りに大人びた口調で問う。




「・・・・では、歪んでいるのは認めるの?」


大きなベビーピンクの目がアルファ一人に視線を注いだ。




「そうだね。確かに僕は『歪んでいる』よ。正論に反感を抱く程悪いけど子供じゃないんだ。


お嬢さん。」




一瞬だけ、本当に一瞬だけ、アルファの脳裏にある光景が浮かぶ。


しかしわずかに起こった胸の痛みを知らぬふりでやり過ごしアルファは目の前の子供に頬笑んだ。





「お嬢さん?」



「あぁ、お嬢さんではないのかな?」



くすりと笑う。変なところに反応を示した彼女は、訝しげに自分の腕を見下ろした。



「・・・・・・・あぁそういうこと。」



じっと手を見下ろしてから納得したように頷く。その声はアルファには聞き取れなかったが、


幼女の顔はあくまで無表情だった。




どうしてだか分からないが、少女ともっと話してみたいと見の底の欲求が呟く。



自分と対等に話せる人間は珍しい。その相手が小さな子供だというのにも驚きだが、アルファ


にとってその部分はさして重要なことでもなかった。





「そうだ。本当にお茶でもしようか?」



あまりに切り替わった内容が唐突だったため、幼女は訝しげに視線を向けてくる。


エルデルの「本気ですか?」と呟く声が微かに耳へと入った。



思いついたような仕草でもって、アルファはさりげなく幼女の隣へと立った。



さきほどから、自然に門を閉じようとしていた、幼女の隣、更なる自然さで館内へと入り込んだ



アルファへの刺さる視線は鋭く冷たい。






「何のつもり?」


刺々しいその言葉にしかしアルファは怯むはずもない。何に関しても飄々とのらりくらり交わす


アルファにとって、幼女の視線などないにも等しい行為だった。



「お茶だよ。そうか。子供はお茶を嗜まないのかい?申し訳ないが甘いぶどう酒は持ちあわ


せてないのだよ。悪かったね代わりにお菓子でもだそうか?」



本気か冗談か分からないアルファの戯れの言葉に幼女の視線がかすかに剣呑に変貌する。










数秒睨みあった末、しかし結局彼女は諦めた。



色濃く残る疲れた顔を浮かべ、白旗を揚げるようにため息を吐いた。





「勝手にすれば。」



「そうだね。お言葉に甘えて勝手にさせてもらうよ。」









にこやかに彼女を追ってゆくアルファの後方、静かに閉じた門を向こうで呆然と成り行きを



見守っていたエルデルは思わず焦った声を張り上げた。





「アルフォール様っちょ、お茶の葉を・・というかわたしを忘れてませんか?????」





アルファは少しだけ振り返って意地の悪い笑みを従者へと向けたのだ。





「自力で登っておいで。」







エルデルは、足元にある荷袋を抱えあげ遠のいていく主人を尻目に心底焦った顔で目の前の



門という壁を見上げるのだった。










<戻る  進む>



【2007/12/20 23:07】 | 中編小説 魔女の館 2 | トラックバック(0) | コメント(0)
魔女の館 (1)
(1) 魔女の館







それはとてもとても深く暗い森の館だった。


まるで見たこともないほど、古めかしい建物だがそれでもアルファの目には美しくも寂しげにそ

そびえたつ城は今まで見たどの景色よりも印象深く映った。


見上げてみて、そっと目を細める。


切れ長の目が、涼しげにその館をじっと眺めた。傍にある植物がそれを取り囲み荒れ果てた庭

はうっそりと静かにそこに在る。




見上げるほど大きなそれを目の前にしてアルファは、微かにため息を吐いた。


予定とは大きく違ったその情景にもはやため息しか出ない。


傍にいた従者が、慌てた様子であたふたと地図を仰ぐが、首を傾げてばかりで明らかに


道を間違ってしまった様子である。






アルファは苛立つ様子もなく静かにその頼りなげな従者を眺めながら、どうするべきかと思考


を巡らせた。


思考を巡らせるといっても、目的地には着くのだろうか。


とひっそりと考えているだけで、全く真剣に悩んでいるわけではない。



その証拠にこの茨の城のようなさびれた館を鑑賞しながら、理知的な容貌とは裏腹に彼にし


ては珍しく小さな好奇心を強め、小さく呟いた。













「まるで、物語の中の世界だね。僕はさながら誘われるようにやってきた・・・ある国の王子


様ってとこかな?」

















小さくくすりと笑うと、微かに目元が穏やかに細まる。



無表情でいれば、冷たげで人を寄せ付けない雰囲気を纏ったアルファの容貌が柔らかく笑み


を浮かべるとわずかだが近寄り難さが薄れてゆく。









戯れの言葉は、小さく従者の耳にも入ったようで、如何反応を返すべきかと困惑した様子で


アルファを見つめた。





主人の戯言に反論できるような身分ではない上に、いつもは済ましたような顔で世界の何処


にも興味がなさげに淡々とした生活を送っていたアルファの意外な一面に戸惑う。






その様子にも全く頓着せず、自分のペースを保ったままのアルファは、地図を片手に困りはて


る従者の青年をちらりとも見ることもなく館の傍へと一歩一歩近づいていく。




そして、呼び鈴らしきからからと軽やかな鈴を少しの躊躇もなくあっけなく鳴らした。













からんからん。音が鳴り響き、城のように聳える館の中へとそれが伝わってゆく。


そうなってしまってから、従者である青年は慌てた様子で主人を引き止めた。












「アルフォール様!!呼び鈴を鳴らしては、この館にお住まいのお方が出てきてしまいます。」




「・・・あぁ。それはそうだろうね?」



当たり前の如く、静かなその声音に困惑は深まるばかり。


地図を見間違えたばかりか、道も半分ほどわからなくなってしまった従者だが焦ることもな


く、落ち着きはらい、それどころか何を思ったのか呼び鈴を鳴らし始めた主人を焦る目で見つ


める。





「ですが、そんなことをしている場合ではないのでは?私の不手際ですが道を間違えたの

ですし言いづらいのですが、急がねばならない約束がおありでは・・・・・・・・・」







従者の言葉にアルファは、顎に手をやりふと考える様子を見せた。だがそれも少し



ばかりですぐに何事もない様子で手を離す。







「どうせ、ただのお茶会だろう。よいよ。


エルデルくんのお望みなら、この館でお茶でもだしていただこうかな。」




冗談とも本気ともつかぬ、アルファの言葉になんともいえない顔をする。




従者の青年エルデルは、一層悲壮な顔で地図を握り締めるが、アルファがそれに頓着する

はずもなかった。








若き伯爵アルフォール・クライン。






大富豪の叔父からすべての遺産を継ぎ、若くして伯爵の名を手に入れた異色の人物。
ただの放蕩貴族とは違い、才能を買われ貿易などの仕事でも優れた才を示す。
それだけでも幸福だと思えるのだが、その容貌もまた優れたものだった。



涼やかな目元に、すらりと高い鼻梁。
全体的に理知的で落ち着いた雰囲気をかもし出す容貌は、社交界でも高い人気を誇る。





さきほどアルファ本人が口にしたように王子と名乗ってもなんら差し障りのない容貌と身分を


持っているのである。



しかし本人に自覚は薄いらしく、自分のことにあまり興味を持ちはしなかった。




それどころか、自分の興味があるもの以外には全く無頓着で、周りの名前すらなかなか


覚えていない。




たまに同じ貴族と接する機会があってもほとんどをのらりくらりと交わしいつの間にか一人で


佇んでいることの多い、不思議な人物であった。












「冗談を言っている場合ですか?・・・・・・・・・冗談ですよね?

どこの誰だかわからない人の住む館にアルフォール様をお連れするわけにはいきません!!

すぐに行きましょう。」



主人を伴おうとするが、アルファは久々に興味をもった景色に夢中であり、ちらりとも目をむけ

ることはない。





徹底した無視ぶりに、さすがに焦れたエルデルが、思わず声を荒げようとした時に高い音が


この辺りに響いた。







呼び鈴の音にそっと耳を傾けていたアルファの手前唐突に大きな門が開いた。



ぎぎぎぎぃと音を立て、門が開き格子の間に見えていた庭がクリアに目に映る。








エルデルの焦りを帯びた顔と好奇を込めたアルファの前に開かれた庭の向こう館からひょこ


りと顔を出す人の影。












「ふ。随分と可愛らしい住人だね。これはお菓子もでるかもしれない。」




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何故こんな場所に少女が??」







前者は楽しげに、後者は困惑ぎみに目に捉えた人物を見た後、声を漏らした。










館から現れたのはこんな人里はなれた森の中に似つかわしくはない推定5歳程の可愛らしい


少女だった。














進む>








【2007/12/07 16:54】 | 中編小説 魔女の館 1 | トラックバック(0) | コメント(0)
小説・・・もどき!!!「並木道」
「並木道」




ふわりと首のマフラーが揺れる。外はあまりに寒く、着込んだコートの下身震いする。

冬。あまり好きではないこの季節。中と外の温度差に戸惑う。

周りを見渡すと、ただただ道が続くばかり。まばらな人通り。

わたしは、ふと曲がり角を眺めた。

いつもの通り道。しかし、わたしの視点はいつもよりとても繊細で美しい光景を捉える。



その道を曲がると、思わずはっとするほどの並木道が現れた。

はらはらと静かに舞い落ちる紅葉の葉がとても綺麗にわたしの目に映った。

それまでまばらだった人たちが誰もいなくなり、その長い並木道だけが淡々とわたし

の前に広がっていた。

まるでそれを独り占めにしたような気持ちで、自転車の上静かに美しい紅葉を見上げた。

寒さなど忘れるくらいその光景が幻想的に、そしてもの寂しげにわたしの前に佇んでいる。



地面は枯れた葉が積もり、茶色い絨毯を敷いたようで、その上を走るわたしはとても

不思議な気分を味わった。

紅葉は綺麗だというけれど、舞い落ちる葉は裏腹に寂しげでありその対比がわたしには美し

い。目で見るというよりも肌で感じ、身体全体で光景を楽しむわたしの頭にたくさんの言葉が

流れた。



朝には確かにただの並木道。

枯葉をせかせかと掃除するおじさんをただ視覚に入れ、忙しく、隣を追い越した。

しかし、同じ風景なのに確かに今のわたしの心は清水のように鮮麗だった。

汚いものがたくさん洗われ、浄化されてゆく気分を味わう。

紅葉が綺麗。落ちる葉が綺麗。静かな道が綺麗。耳をそよぐ冷たい風が綺麗。



そして、わたしは青空を見上げる。

すっきりと澄んだ青空ではなかったけれど、青を隠す真っ白な雲との共存が心に響く。

いつもの道が、いつもの通り道が、わたしの身体を揺り動かす。

まるで小説の主人公のごとく、頭に舞い降りた言葉を心の中で呟きながらわたしは道を

軽快に通り抜けた。


空はとても澄んでいて、同じくわたしの心も綺麗に澄んでいる。




「並木道」明日もまた、わたしは無心で通り抜けるだろう。


この美しい並木道を。

























小説??詩??ていうか今日の蜜の帰り道の話。とりあえず、すっごく書きたかったんですよね。

勿論「わたし」はあたしのことです。











【2007/12/01 01:54】 | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(0)
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