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魔女の館 (2)
(2)館の住人





蒼の双眸がこちらへとじっと視線を寄せる。



門を開く少女は、じっとエルデルを観察した後その視線をアルファへと向けた。



アルファが珍しく笑みを向けてみると、それまでの静かな観察眼が微かに嫌そうに揺れる。





珍しい反応はアルファの好奇心を擽り、むっとするどころか楽しげに更なる笑みを深めた。



あまりに美しく聳え立つ館は、アルファの興味対象であったが、この館に住まう幼女までも


に興味が沸くとは思いもしなかった。



美しく曰くありげな館に住まうのが小さな幼女だというのにも驚いたが、更なる驚きは



この子供の仕草や態度の方である。



貴族の中にはそれに不釣合いな容姿のものが意外と多い。しかしそれを金を撒き散らして着


飾ることで、覆い隠しているのが現実だ。



身を飾ることで貴族らしさを取り繕う者とは違い、アルファには貴族然とした佇まいと容姿が


あった。それは街娘どころか他の貴族らの子女ですらうっとり見とれさせてしまうような容貌である。





初めてアルファを見る人間の反応は差はまちまちにしろ必ずといっていいほど、立ち止まって


ほおける。いつもならうっすら上気した顔で数秒固まってしまうはずなのだが、この館の幼女


は視線を初めて絡ませた時の反応は全く異なるものだった。




そう、顔を顰めたのだから。







「・・・・・・・・・・・・何か御用?」





正に口調は淡々とし、抑揚ないものだった。静かにこちらを見る目は寒々しく冷たい。




そう聞かれ、アルファの身分を知っているエルデルは思わずむっとした。


主人へと傾倒せずに対応した幼女の態度には少しだけ驚いたがそれにしても貴族に対して


失礼きわまりないこの態度は無礼である。







思わず一歩前に出かけたエルデルを片手で制したのはアルファだ。


エルデルがその表情を目にして、やや表情を硬くした。



あまりに機嫌がよさげに笑みを浮かべるアルファは、じっと幼女を見ながら口の端をあげる。






その目には興味対象である彼女しか映っておらず、エルデルの中では警報が鳴り響く。



こうなってしまうと主人はもうそこしか目に入らず、何を言っても聞き入れてくれない


のだと、少し前の経験からエルデルは分かっていた。









母ゆずりであるエメラルドの双眸を幼女へと向け、アルファは柔らかく微笑む。


形容するなら天使のような純白の柔らかさを持つ微笑みである。


けれど、またもや彼女から返る反応は、嫌そうに顰められたもののみだった。




「用って程ではないのだけどね。ただじっと目に映った館に心奪われてね。


君が出てきた時はびっくりしたよ。このような場所で誰と住んでいるんだい?」






じっと見つめると何故か逸らされる視線。



しかしそれはいつもの恥じ入った末の反応ではなく、ただアルファと目を合わせているのが



単純に不快だといいたげな表情だ。



普通貴族なら怒りを抱くであろうその態度だが、アルファはむしろその新鮮さが良かった。



可憐な容姿の割りにあまり表情を変えない彼女が自分をみて嫌そうに顔をゆがめるのはむし


ろ楽しい。無礼とは思わない。ただ面白い。


常日ごろ日常に興味が希薄なアルファにしては珍しくこの幼女に構いたくなった。








「そんなの貴方に関係のないことよ。貴族って本当に詮索が好きなのね。馬鹿な貴族は嫌い


だけど歪んだ人間ってもっと嫌。」




あまりの暴言に一瞬唖然とする。


隣で同じく呆然としたエルデルの頬が次第に赤らむ。



「っっ、無礼なっっ・・・・・」



主人を明らかにさけずむ言葉に憤りのまま声を荒げたエルデルはしかし吐き出そうとした


怒りを留めずにはおられなかった。





「くっっっ・・・・・・・・・」




隣から聞こえた声に一瞬気をとられると、思わぬものを見てしまった。






「くっっっふははあはははは。っあははははっ。」



正に腹を抱えるようにして笑うのは見たこともないほど紅潮させた顔で笑うアルファの姿だった。





何がおかしいのか笑う主人にエルデルの呆気にとられた目が向かう。


呆然と見ているのはなにもエルデルだけではない。


暴言を吐いた本人でさえ、訝しげにアルファをじっと観察している。






大きな笑いを響かせた後、涙目をさりげなく長い指で取り除くと、アルファは、変人を見るよう



な二つの視線へと視線が絡んだ。



まるで、おかしな人物を見るような視線とはちあい、二人の顔をみやって更なる笑いの発作を


感じる。



しかし、これ以上変に思われたらいけないというアルファの妙な自制心のおかげでなんとか


笑いは収めることができた。







「ふふっ失礼。つい言われなれない暴言に思わず笑ってしまったよ。


そうだね。馬鹿な貴族は嫌いなのかい?残念僕は馬鹿ではないよ。」





アルファの不敵な声が響く。


楽しげに紡ぐ言葉に小さな幼女が年の割りに大人びた口調で問う。




「・・・・では、歪んでいるのは認めるの?」


大きなベビーピンクの目がアルファ一人に視線を注いだ。




「そうだね。確かに僕は『歪んでいる』よ。正論に反感を抱く程悪いけど子供じゃないんだ。


お嬢さん。」




一瞬だけ、本当に一瞬だけ、アルファの脳裏にある光景が浮かぶ。


しかしわずかに起こった胸の痛みを知らぬふりでやり過ごしアルファは目の前の子供に頬笑んだ。





「お嬢さん?」



「あぁ、お嬢さんではないのかな?」



くすりと笑う。変なところに反応を示した彼女は、訝しげに自分の腕を見下ろした。



「・・・・・・・あぁそういうこと。」



じっと手を見下ろしてから納得したように頷く。その声はアルファには聞き取れなかったが、


幼女の顔はあくまで無表情だった。




どうしてだか分からないが、少女ともっと話してみたいと見の底の欲求が呟く。



自分と対等に話せる人間は珍しい。その相手が小さな子供だというのにも驚きだが、アルファ


にとってその部分はさして重要なことでもなかった。





「そうだ。本当にお茶でもしようか?」



あまりに切り替わった内容が唐突だったため、幼女は訝しげに視線を向けてくる。


エルデルの「本気ですか?」と呟く声が微かに耳へと入った。



思いついたような仕草でもって、アルファはさりげなく幼女の隣へと立った。



さきほどから、自然に門を閉じようとしていた、幼女の隣、更なる自然さで館内へと入り込んだ



アルファへの刺さる視線は鋭く冷たい。






「何のつもり?」


刺々しいその言葉にしかしアルファは怯むはずもない。何に関しても飄々とのらりくらり交わす


アルファにとって、幼女の視線などないにも等しい行為だった。



「お茶だよ。そうか。子供はお茶を嗜まないのかい?申し訳ないが甘いぶどう酒は持ちあわ


せてないのだよ。悪かったね代わりにお菓子でもだそうか?」



本気か冗談か分からないアルファの戯れの言葉に幼女の視線がかすかに剣呑に変貌する。










数秒睨みあった末、しかし結局彼女は諦めた。



色濃く残る疲れた顔を浮かべ、白旗を揚げるようにため息を吐いた。





「勝手にすれば。」



「そうだね。お言葉に甘えて勝手にさせてもらうよ。」









にこやかに彼女を追ってゆくアルファの後方、静かに閉じた門を向こうで呆然と成り行きを



見守っていたエルデルは思わず焦った声を張り上げた。





「アルフォール様っちょ、お茶の葉を・・というかわたしを忘れてませんか?????」





アルファは少しだけ振り返って意地の悪い笑みを従者へと向けたのだ。





「自力で登っておいで。」







エルデルは、足元にある荷袋を抱えあげ遠のいていく主人を尻目に心底焦った顔で目の前の



門という壁を見上げるのだった。










<戻る  進む>



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【2007/12/20 23:07】 | 中編小説 魔女の館 2 | トラックバック(0) | コメント(0)
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