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魔女の館 (4)
(4)従者の心配事



よく手入れされた花咲き乱れる庭の一角を占領しながら、アルファは小さくため息を吐いた。


さきほどから美しい花々がなんとなく色あせて見えるのは、フレアが消えてしまっ

てからだろうか。


「遅いね。」


なんとはなしにその花々を見やりながら物憂げに目を細めるアルファへとエルデルはやや困っ


たように小さく頷いた。


「ええ。お菓子の用意に手こずっていらっしゃるんじゃないでしょうか?」

馬鹿丁寧な答えが何処か業務的な口調だったのが気に入らず、アルファは少しだけ苛立つ。


後ろに控える従者へとちらとだけ目をやってから、アルファはいつもの詰まらなげな目を一層


詰まらなそうなものへと変え、冷ややかに言葉を吐いた。


「まあ、そうだろうね。にしてももう少し何かいい答えは思い浮かばなかったのかい?

ひねりも何もなさすぎて、一瞬苛立ちを覚えたよ。」



「は・・・えぇ!!?」


なにやら理不尽な言葉に一瞬素で驚いたエルデルを見やり、アルファが意地悪げに笑った。



「冗談だよ。落ち着いて。」


柔らかく落ち着いた声音で言ってあげると、エルデルはわたわたと慌てた後、居住まいを正す


ようにごほごほと数たび、咳こみ自分の落ち着きのない慌てぶりを誤魔化した。


いつもは姉をお手本にしているのか、落ち着いた従者を気取る青年にちょっとした嫌がらせ


である。一通りその様子を観察し、少し溜飲が下がったアルファは恥じ入るように顔を俯けて

いるエルデルから視線を離した。



アルファは何事もなかったように優雅に椅子に座りなおした。




それにしても本当に遅い。


お菓子を出すと立ち上がってから、もう半刻ほど時が経つ。何をどうやればここまで時間が


かかるのかも皆目分からないし、人に待たされる経験があまり多くはないアルファは暇を


持て余していた。


城を見れば満足だったはずの気持ちは、既に薄らぎ、アルファが待ちわびるのは先ほど

であったばかりの子どものことだけである。







「いったい僕のお姫様は何処まで行ってしまったのだろうね?」

つい、そのままの心情を声に出して言うと、後ろに立つ従者がひくりと変な声をあげた。


「あ、ああ、あの、アルフォール様。そのような言い回しをされては、貴方が幼い子どもに熱で


もあげているように取られてしまいます・・・」


心配げな声にアルファの手入れがなくとも細い眉がぴくりと上がった。

エルデルには見えないだろうが、眉間に少々皺が寄る。


アルファにとってはお姫様というのはただの揶揄のつもりで言ったのだが、エルデル

はそのように聴こえなかったらしい。



「エルデル君。もしやそのような詮索を先ほどからしていたのかい?」


おっとりとした話口調だが、エルデルはぞくりと背筋に悪寒を感じて、小さくうめいた。


長い付き合いのエルデルだからこそ、アルファの声音の違いに気付いたのだろう。


冷ややかさなど少しも感じない柔らかい口調だが、その声が少しアルファを怒らせていること

に気付いたエルデルは、続けて言おうとした事柄を口をぱたりと閉じることで止めた。




「言っておくけれど、僕が今まで貴婦人に手をださなかった理由は君が想像しているような


いや、妄想しているような理由じゃないからね。


全く浅はかなのは昔から変わらないのだね。僕は別に小さな子どもしか愛せない訳ではない


よ。確かに可愛らしい娘だけど、僕が考えているのは君が思っているような下劣な気持ちから


じゃなく純粋に興味がわいたってだけなのだよ?


妙な想像にいらぬ冷や汗を掻くのは君の自由だけど、僕を巻き添えにするのはやめてくれ


ないかい。」


辛辣に振り向きもしないで紡いだ言葉。しかし怒っているようには到底思えない声音で常人には


分からないであろう苛立ちが篭っているのにけれど、エルデルは気付いたようだった。


言葉もなくこくりこくりとうなずきしゅんと俯く。



アルファが見ているわけでもないのだから、意味がないように思えるが、アルファはそれを感じ


たのか、それ以上は言わなかった。



少し静かな間があく。



しゅんとうな垂れている姿が見ずとも目に浮かび、アルファは言い過ぎたかという気もしない

でもなかった。




「あのアルファさ・・・アルフォール様っ」



気落ちした声が響き、はっとしたように改まる声音に少し笑ってしまう。

いきなりくすくす笑った、アルファに不思議そうな目が送られてきて、アルファは余計に

可笑しかった。



「エリダが何と言ったかは知らないけど、別に昔みたいにアルファと呼んでくれても

いいんだが?」


「いいえ。駄目です。何をおっしゃるのですか?

貴方の身分を知らなかった昔とは違うのです。わたしのような従者に簡単に愛称など呼ばせ

てはいけません。」



真剣な顔で言うのでアルファはそれ以上の強要はしない。

日増しに似てくる姉弟に少し複雑な気分を味わいながら、小さく呟いた。



「僕は、あまり本名が好きではないのだけどね。」


エルデルは静かに呟いたそれが聴こえていたようで、はっと心痛の表情を浮かべ、押し黙った。





「出来ればアルファの方が気が楽なんだよ。」

アルファは振り返らなかった。けれど、それが更に背後に静かに立っているエルデルを

悲壮な顔つきへとさせる。


「あの、ですが・・・その・・・」


困ったような声で青ざめるエルデルの様子に、アルファはちらりと振り返った。




「なんてね。もう過ぎたことを僕が引きずる性格だとでも思うかい?本当にからかいがいが

あるな。エルデルくん。最近じゃ姉君も仕草を真似て落ち着いたふうを装っているが、僕は

覚えているよ。昔から身の上話を親身になって聞いてたっけ?確か一度それに騙されて大金

を騙し取られたよね?エリダに鬼のように叱られていた君に僕が言った言葉覚えているか

な??」


エルデルが戸惑った顔でアルファを見ていた。

そして、過去を思い出すような仕草でさっと顔が青から朱に染まってゆく。



「アルフォール様!!!!!」


「あ、思い出したかな?僕は笑顔でこう言ったんだよね。

バーカ。って。君確か泣きそうな顔で僕を見ていたっけ??」




過去を思い出すようなそぶりのアルファへとエルデルは、色んな思いが綯い交ぜになったよう

な複雑な顔で睨んできた。




「ええ。わたしはその時初めて優しげだったアルフォール様を悪魔だと認識しましたよ。

睨みつけたわたしを見た、エリダに更に凶悪な顔で怒られましたから。」




アルファは楽しげに笑った。


エルデルはさきほどの話など忘れさって顔を赤く染めて、怒りを含んだ顔をどうにか落ちつか

せようと葛藤している。


「あははは。君って本当損な性格だね。エリダも真面目だから仕方がない。

言っておくが、エリダの小言を最終的に止めてあげたのは、僕だよ。」



「・・・・・・・・・ええ、まるまる30分程近くで笑い転げてましたっけ?本当に最終的

ですよね。」




エルデルの恨めしげな顔を見て、アルファはまた少し笑った。


この庭に来てから、よく笑っているような気がするな。とふと思う。


過去の話をするのはもう何年ぶりのことだろうか。それほどに枯れていた自分の本心から


の笑みにアルファは少し可笑しくなった。





『アルフォール・・・ねえアルフォール。

あたしと一緒にお庭でお散歩しましょうか?』



耳奥で鳴るのはどこか懐かしい、あの人の声で。



それはそっと、自分の奥の奥へと隠して消えた。







「フレア様戻られたようですよ!!」



庭にいつの間にか、見える小柄な娘にアルファは如何してか少しだけほっとした。












<戻る  進む>












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【2008/01/10 20:40】 | 中編小説 魔女の館 4 | トラックバック(0) | コメント(0)
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